ヨクイニン(ハトムギエキス)で首イボは取れない医学的理由
ヨクイニンは、ドラッグストアなどでも購入できる市販薬。
他のサイトでは、ヨクイニンでイボが取れたと記載のあるサイトが多いですが、医学的に見ると一般的なイボ(ウイルス性のイボを除く)が取れる可能性は著しく低いです。
目次
ヨクイニンとハトムギエキス、ハトムギ茶の関係は?
ヨクイニンは漢字で「薏苡仁」と書く、漢方薬の成分の1つです。
漢方薬は、ショウガとかシナモンなどを代表として食品から取れる成分であることが多いのですが、このヨクイニンも「ハトムギ」から作られている成分です。
ハトムギ茶として飲んでも、その成分の一部を体に取り入れることが可能です。
市販のヨクイニンと、病院で処方してもらえるヨクイニンの違いは?
実は、市販の「ヨクイニン」と病院で処方される「ヨクイニン」の成分は全く一緒です。摂取量もほぼ一緒。
あえて違いを探すとすれば、成分の品質の違い程度です。
保険診療の薬は、国の定めた一定基準の安全性をクリアした成分なのに対し、市販のものは取扱会社などによって成分のばらつきがあると思われます。
中には保険診療で処方できる製品よりも質の高いものがあるかもしれませんが、効果が数倍…とは考えにくいのではないかと思います。
ヨクイニンはどんな作用があるのか
ヨクイニンが持つ薬としての作用の中で、イボに働くのは「免疫細胞を活性化する(免疫賦活作用)」です。
もう少し具体的に説明すると、ヨクイニンを飲むことで、免疫細胞の働きが良くなり、ウイルスや細菌から体をしっかり守ってくれるようになります。
そのほかにも、
・抗酸化作用
・抗アレルギー作用
・抗高脂血症作用
・抗炎症作用
・筋弛緩作用
・血糖降下作用
・利尿作用(急性・慢性腎炎ネフローゼの治療に利用)
など、種々の薬理作用が報告されています。
ただし、この効果は西洋薬のように研究や調査で裏付けられたものではなく、古い漢方の教科書から転用されているものです。劇的に効くというより、マイルドに体質改善を期待する、そんな作用と考えられています。
ヨクイニンを使うイボの種類は?
免疫が関係しているイボに、ヨクイニンは作用すると考えられています。
つまり、「ウイルス性のイボ」にヨクイニンは作用します。
手指のイボ(尋常性疣贅:じんじょうせいゆうぜい)や、顔に急にできてちょっとかゆい青年製扁平疣贅(せいねんせいへんぺいゆうぜい)などです。私が皮膚科医として18年間、数千人以上の首イボを見てきた中での印象は、 首にウイルス性のイボがある人は2%程度となります。
ウイルス性のイボとはどのようなイボか、最後に写真を掲載しているのでぜひご覧ください。
ヨクイニンをウイルス性イボに使う根拠……しかし、効きはイマイチ
ウイルス性のイボにヨクイニンを使う根拠の前に、なぜイボができるかについて説明します。
イボウイルスは、そもそも人の細胞の中に入り込んで、そこで共存して暮らしています。
我々の体の方で、イボウイルスの存在を許してしまっていると(免疫が十分に働いていないと)、体から追い出されることがないため、いつまでもそこにウイルスが存在してしまっています。
免疫を何とか十分に働かせて、ウィルスを退治する方法はないのか……ということで「ヨクイニン」を使用します。
古い漢方書には、ヨクイニンを飲むことによって、免疫系が強化され、共存していたウイルスを体から取り除かれると記載がありますが、残念ながら実際患者さんを診ていての印象は、長年飲んでいても変わらないというところです。
他の皮膚科のDr.と話をしても
「ヨクイニンは、ウイルスのイボに称するけれど、あまり効かないよね」
「ヨクイニンでウイルスが取れる人もいるから、試しにしばらく飲んでみましょうと話して処方する」
などと、やや消極的な処方になっているのが実際の医療現場の裏話です。
ヨクイニンエキス配合のクリームにはイボを取る作用があるの?
ヨクイニンは体の中から免疫系を緩やかに活性化してイボを取り除くので、飲み薬で摂取することが大切と言えます。
塗り薬で局所的に免疫が高まるかどうかに関しては、今のところ医学論文でその効果を確認したデータは見つけられませんでした。
首や体のイボはヨクイニンで取れるの?
首や体にできるイボのほとんどは、ヨクイニンでは取れません。
これらのイボのほとんどが、ウイルスとは関係なく、良性のできものである「アクロコルドン」「スキンタッグ」「軟性線維腫」です。これらは遺伝や皮膚への刺激などが原因でできるタイプのイボなので、免疫系をしっかりさせるためのヨクイニンは全く効く理由がありません。
先ほどお伝えしたように、私が皮膚科医として数千人以上の首イボを見てきた中での印象は、首にウイルス性のイボがある人は、2%程度で、残り98%の方は良性のできものとなります。
つまり、ヨクイニンを使用して、取れる可能性があるイボは、全体のわずか2%の人にしか見られないですし、その2%の人もヨクイニンを飲んだだけで取れることは考えにくいのです。
ウイルス性のイボはトゲトゲしている
ウイルス性のイボは、通常の首イボと比べてトゲトゲしています。
症例1:トゲトゲタイプ
症例1の写真のように、角のように先端がとがっているタイプ。
症例2:トサカタイプ
症例2の写真のように、表面がトサカのようになっているタイプ。
この2タイプが典型的です。通常の首イボと比べて、触ると固く感じます。
どちらのタイプも、液体窒素で治療をした方が確実に取れます。
特に、顔や首にできたウイルス性のイボは、1~3回程度で取れることが多いので、長引かせて他に移るリスクを考えると、早急に治療を受けることをおススメします。
液体窒素治療については、「液体窒素でのイボ治療は痛い?経過写真や回数」の記事も参考にしてみてくださいね。
*注意:ウイルス性のイボは放置すると他に移って、どんどん増える可能性があります。ヨクイニンでゆっくり体質改善を図るのはあまりおすすめできないです。
皮膚科医20年の経験からの結論
ヨクイニンで首イボが取れる可能性は、かなり低い。
上記のイボに当てはまらない場合は、まずはご自身のイボがどのような種類かについて、「首イボはなぜできる?原因と治療方法を医師が解説」の記事を参考にしてみてください。そのほかの市販薬でイボが取れるかきになる方は、市販のクリームでは首イボがとれない理由をご覧ください。